戦う理由の話

(特撮の話 3)


特撮にはまった理由を考えるたび、一番最初に出てくるのが「戦う理由」だ。
大前提として「地球を護る」とか「人類を護る」とかが必ずあるものの、各個人にまた別の「戦う理由」があるように思える。
その理由が好きだから、特撮が好きなんじゃないかと。

ヒーローは大抵地球を護っている。これが大前提。
普通の人間が、何かを護るために変身して戦っているのが特撮だろう。
だけど、その中にも他の理由が見えるときがある。

大前提の「護るため」じゃない理由…それが必ずしも作品内に明確に示されているわけではないが、その示されていない理由を、勝手に想像することが出来るソースは用意してくれている。
私の場合、それは妄想エリアに直結しているようなのだが(笑)。

妄想エリアの文章を読み返して観ると、ほとんどその理由ががかかわっているようだ。特に暗い話は(笑)。
戦うとき、ただ「何かを護る」だけじゃ戦えない。
それ以外に、その人物の中で一体何があって戦っているのか…どうもそれを考えたくて特撮の文章を書いているような気がする。
特定の誰かを護るでもいいし、自分が何か知るためでもいいし、戦うことに飢えているからでもいいし、空を飛び続けていたいからでもいい。
「世界の平和」だけの理由じゃ、つまらないのだ。

子供向け番組だから、そこまで考えて観る必要はないのと言われるかもしれない。
でも、どうせ観るならそういうところを観て、何かを考えれる方がはるかに楽しい。
ありえないものの襲来によってありえない状況下に置かれる世界が特撮の世界観なのだとしたら、普通の世界にいる自分が観たときに、そのありえない状況で一体どうすればいいのか悩んでいる登場人物たちが、いかにして戦っているのかを考えるのは、その世界に入り込む手段の一つだろう。
入り込んだとき、そこのアンダーグラウンドのことを考えてしまうのは、いささか妄想力が発達しているせいかもしれない(自覚笑)。

そうやって入り込んだ世界で何を観るか…私は戦う理由を探してしまう。
ライダーやウルトラマン、それにアニメの主人公もそうだが、一番最初に戦い始める理由は、「変身してしまうから」だろう。
初代からライダーは(V3とかは除く)自ら変身するように望んだわけじゃない。
ウルトラマンだって、初代なんかは事故でウルトラマンがハヤタ殺しちゃったから、ゾフィーが「私は命を二つ持ってきた」とか謎のセリフ吐いて同化しちゃったものだし。
そうなると、戦う理由というのは「変身しちゃうから、戦う」なのかというと、これがそうでもない。

変身するから戦う…それは大前提に含まれるもので、私が探してしまう理由とはちょっと違う位置にあるようだ。
戦っている姿というのは、どこかしら絶対に切ないものがある。
その切なさの意味を、考えてみたくなるのだ。
平和のために人間のために戦っているのに、何でそんな切なさを見せるのか。
作品中には、その理由は意外とはっきり出してこないことが多い。
直接的な理由(例えば恋人の死とか)は明確だが、そのときのキャラの頭の中とかはあまり表現されてないことの方が、確実に多いのだ。

何故切なく観えるのか。その理由を自分の中で探してしまうと、結局はキャラの「戦う理由」を模索することになる。
元々頭の中でぐるぐる考えるのは嫌いじゃないし、そういう文章を書くのもかなり好きだ(だから暗いのかもなぁ)。
いろんな考え方や捉え方がある中で、自分はこの切なさをこういう風に思う、それをはっきりとさせたい欲求があるのかもしれない。
私の特撮の観方は、そういうところが大本になっている。

特撮の文章を考えるとき、必ずと言っていいほどポエマーか暗い話になる。
どちらも、キャラになりきって書いているつもりなのだが、そういう時はキャラの切ない気持ちまで乗り移ってしまうから…なのだろう。

020227